“のんちゃん”こと鈴鹿 のり子は、現代の医学では根治不可能な脳の病変による疾患をもち、現在、車いすで生活をしています。
身体に現れる症状は、年齢とともに重くなっていき、今は、いくつかの症状と闘いながらも、日々の生活を大切にしながら過ごしています。
また彼女は、その疾患による症状だけでなく、いわゆる思春期と呼ばれる時期に受けた虐待の後遺症をも抱えています。
十代~二十代半ばといった個人としての物事の考え方が培われていき、人格形成に大きく影響する時期を虐待の中で過ごすと、健康であっても働くことのできないほどの“心的後遺症”というものを負うといわれています。
彼女もまだ歩けていた頃から、虐待の後遺症による発作で、ボランティアをしている最中に呼吸困難を起こして倒れたり、体重が35キロにも満たなくなってしまったりしたこともありました。
言葉で説明したところで、なかなかわかっていただける事柄ではないとは思いますが、とりわけ思春期に虐待を経験した者は、ただ生きて「普通に暮らす」ことさえも辛く感じられるといわれています。そんな虐待経験者が、病気や障害を負うと、心理的にも身体的にも絶えがたい辛辣な状態に陥ります。それは、医学的にも臨床心理学的にも立証されている事実です。
疾患と虐待の後遺症の両面から苦しむ彼女に医療機関の先生は言いました。
「自分にとって、何か支えになるものを見つけて、それを実現しよう」
彼女は、懸命に「自分にとって支えとなるものとは何か」を考えました。
そこで思いついたものは、ふたつ。ひとつは、元気だった頃にしていた「役者」をもう一度やりたいというものでした。
彼女は、虐待経験者のように一時だけでなく何年も、ともすれば一生涯にわたって背負った心の傷に苦しむ人がいることを伝えようと、役者への道を歩みはじめた矢先、車いすの身となってしまいました。
一度は諦めようとしたその道ですが、今の彼女は言います。「今、この状態でできる『車いす使用者』か、『ベッドの上の患者役がしたい』そうすれば、闘病の中で感じてきたことも、きっと生かせる」
そして、もうひとつが、これまでつけてきた日記から、何点かをピックアップし、それにイラストに長けた友人のイラスト、またセミプロカメラマンとして活躍していて、現在、闘病している知人の写真を添え、一冊の本をつくり、出版したいということです。
それらの実現のため、彼女は、数年にわたって体調を崩してしまうほどに懸命に努力してきましたが、個人で動いたところで、なかなか理解してもらえないのが現実です。
出版に関しては、費用を用意すれば協力してくれる企業もあるのですが、
健康な人のように働くことが困難な身の彼女には、数百万円といった資金など到底用意することはできません。
そこで、彼女をサポートすべく、「のんちゃんを救う会」を設立に至りました。